「Emma NY紀」2

大雪の後

少しずつ気温は上がった。

日差しも強く雪は溶け、

歩道は水溜りでぐちゃぐちゃ、

とても滑りやすい状態となっていた。

その道をNYの人たちは颯爽と、

足元を汚さずスマートに歩く。

その姿がかっこいい。

ちなみに信号標識を守る歩行者は、

誰一人いない。

車が走っていなければ、

止まれの表示でも皆進む。笑

タクシーに関しても

イエローキャブやグリーンキャブがそこら中を走っている。

慣れればバスも使い勝手が良い。

交通事情に加えて嬉しいのがNYの道。

碁盤目状の道の全てに、

ストリート名、番号が付いている。

そのため、

迷っても標識を見れば

自分がどこにいるのかをすぐに把握する事が出来る。

方向音痴な私がNYを一人で歩けるのも、

そのおかげだった。

 

大雪から3日目。

雪の日よりもかなり冷え込んで凍えそうな1日。

コーディネーターの女性の案内で黒人教会の礼拝へ同行させて頂いた。

興味深い話をたくさん聞く事ができた。

キリスト教でも黒人教会にはマリアは居なくて、

居るのはジーザスのみ。

どの教会も必ずキーボード、ドラムの生歌と生演奏がある。

静かにお話を聞くというより、

みんな大きくうなずいたり話に相槌を打ったり、

踊りだしたり「ジーザス」と唱えたり。

ミサを盛り上げる、という事が1番の神への奉仕だという。

途中で本格的なダンサーの踊りも入ってくる。

また教会には必ずナースがいる。

礼拝中に神が誰かに乗り移り、

その人が意識を失い倒れてしまうことがあるそうだ。

その時にはその人を囲んで、

演奏したり歌ったりしてまた礼拝を盛り上げる。

日本ではまず見ることの出来ない光景のように思う。

礼拝の後半では、

みんなで前に出て手を繋ぎ輪になって、

目を閉じてお祈りをする。

全く国籍の違う人の手の温かさを感じながら、

自身や家族、周りの人を想って祈る。

何故だか自然と涙が止まらなかった。

 

 

教会を出た後、

smokeという有名なJazz Clubで

ランチライブをやっているという情報を得たので、

早速、地下鉄で向かうことにした。

NYの地下鉄は24時間運行していて

とても便利だ。

もちろん深夜に乗るのは

かなり物騒で避けるべきだと思うが。

一駅の間隔が短く、

ちょっとした距離でも便利に利用できる。

特に外を歩きたくないような寒さの時期はなおさら良い。

ただ、座席のシートは硬く、

揺れもあるので長時間乗ると疲れる。

でも、一律料金でどこまででも行くことができる。

3分乗っても1時間乗っても同じ料金なのには驚きだ。

そうこうしてるうちSmokeについた。

店内に入ってみると

40〜50人入ったらいっぱいであろうか、

わりとカジュアルな雰囲気のお店だった。

席は6割くらい埋まっている。

NYでは、窓のない地下のJazz Clubは多いのだが、

ここは路面店なので、

大きな窓から光がたくさん入ってきて明るい。

1月になっていたが、

まだ店内は可愛らしくクリスマスの飾り付けがされたままだった。

この日は黒人女性ボーカリストと

ピアノ、ベース、ドラムのトリオ演奏だった。

しかもミュージックチャージが無料というではないか。

派手なことはしないトリオ演奏と雰囲気たっぷりのボーカル。

予期せずいい時間を過ごすことが出来た。

時にNYでは、

いい音楽をチャージフリーで聴くことができる機会がある。

冬の時期はお店的にボーカル演奏よりも

インストゥルメンタルの方が多いようだが、

それでもグラミー賞に2回ノミネートされたボーカリストの圧巻の歌を聴くことが出来た。

またそこで聴いた黒人トランペッターの音は、

日本で聴いたことのないようなまさに本場の音だった。

その人の、人生までもが見えてしまうような音。

これがNYサウンドか、流石にかっこいいと思った。

つづく

Text:Emma

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